第1話

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 康太とはピュアな関係を続けていた。彼はスポーツが強い大学へ、私は普通の大学へ進学を希望してたから、進路は別々だったけれども勉強を一緒に頑張った。家で勉強する時、正直言って深冬に会わせるのが心配だった。  でも、学校でも相思相愛のお似合いカップルと認定も受けていたし、康太が深冬に目移りしないと信じていたから、ちゃんと紹介した。  深冬には康太のことをずっと相談していたから、よかったね、お姉ちゃん、と喜んでくれた。  康太が深冬を好きになったりしないかという心配は杞憂に終わった。  初めて、深冬よりも私との関係を継続してくれたのが康太だった。  受験まで頑張って勉強を続け、無事二人とも合格し、それぞれ別の進路へ進んだ。康太は地元を離れ、遠くの大学へ進学したものだから当然遠距離になった。それでも私たちは大丈夫だと信じていた。大学は違っていても、会う時間をなんとか取り、愛をはぐくむ努力をしたが―― 『香菜、ごめん。もう、君とは無理だ』  大学一年の冬ごろ、一方的に別れを告げられた。別れたくないと縋ったが、香菜を信じられない、と悲壮な顔で告げられた。着信も拒否されてしまい、そのまま終わってしまった。  泣いて、泣いて、涙が枯れるくらい泣いた。すごく好きだった初めての彼氏。卒業前、私の初めてを捧げた。彼も初めてだったから、ぜんぜんうまくできなくて、でも愛おしくて、ゆっくり大事にしたい恋だった。遠距離だからすれ違いが多くて、なかなか会えなかったのが致命傷になったのだろう。  落ち込んでいると深冬が慰めてくれた。涙ながらに康太はすでに別の女性と付き合い始めた噂を聞いた、と教えてくれた。遠く離れていても、噂というのは恐ろしいものだ。康太は地元に戻った際、商店街で私とは違う女性と腕を組んで歩いていたらしい。  遠距離恋愛で、すぐ傍で昔のように支えられなくなったから、私が邪魔になったんだと理解した。  それからも、お付き合いする人とは長く続かなかった。  康太の時のように捨てられてしまうかと思うと、怖くて一歩引いていた部分があるのは否めないが、それでも頑張ろうと努力した。でも、ダメだった。
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