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「種村さんて、カウンセラーみたいですね」
わたしは少しだけ、唇を綻ばせた。
「あ、ようやく笑いましたね。水沢さんは笑顔が素敵なんだから、もっと笑うべきです」
「では、僕はこっちなんで」
駅の改札でわたしは種村とは別方向に分かれた。
二次会に流れるグループはあったが、わたしたちは帰る選択をした。
朱美はわたしの肩を叩き、感謝しなさいよね、ものにするのよと一人舞い上がっていた。
「じゃあ、明日」
「種村さん、水沢祥子をよろしくね」
こちらが赤面しそうなほどの声で朱美は種村に呼び掛けた。種村は照れくさそうに笑った。
「あのう、名刺、渡しておきます」
分かれ際、種村から渡された名刺には電話番号、アドレス、Xのアカウントまで書かれていた。
わたしは電車の中で、妹に遠慮していた自分を客観視してみた。やっぱり、そろそろ自分を許してもいいのかもしれないと思った。
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