7月17日

2/2
前へ
/87ページ
次へ
「宮子さん、カニ触れるんですか?」 「当たり前でしょう。わたし、静岡のド田舎で育ったんだから」  宮子さんはカニを解放すると言った。 「わたしさ、後妻業の女だって、世間から疎まれているみたい。考えてみれば、峻三さんが亡くなったら、わたしが二分の一相続するんだものね」 「それは当然の権利です。世間がとやかく言う資格はない」 「でも、世間はそうは見ない。いい?この世の中にはね、やっかむ者とやっかまれる者の二つに分かれるの。祥子ちゃんも後者になりなさい」  宮子さんは靡く髪を手で押さえながら言った。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加