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7月27日
わたしは種村と仲直りをするために、彼を家に招待した。
父親はリハビリに宮子さんといっしょに出かけた。
だから、家の中には種村と二人きりだった。
久しぶりにキッチンに立ったわたしは慣れない料理に悪戦苦闘した。
だが、宮子さんから伝授した料理法を少しずつ思い出し、なんとか料理らしい料理を出せた。
「美味しそうだ」
「味は保証できないけど、見た目は様になってるでしょう?」
「うん。それじゃ、食べようか」
二人はテーブルを挟んで、料理を口に運ぶ。
「美味しい。愛情がこもってるよ」
種村は饒舌だった。きっと、種村もわたしに会いたかったのだろう。だが、プライドが高い種村はなかなか、仲直りを言い出すきっかけが掴めなかったのだろう。
「ありがとう。種村さん。わたし、あの時、どうかしてた...」
「気にするな。もう、その話はやめよう。それより、フードの男が君をつけているんだね。それは穏やかな話じゃないな」
種村はスープを飲んでいる。
「陸奥をやったのも、その男だと思う。やっぱり後は警察に任せた方がいいのかしら?」
「警察か。あまり期待できそうにないな。十二年前に、警察が陸奥を犯人だと思い込んで、捜査を打ち切った。失態だよ。警察は無能だ」
種村は吐き捨てるように言った。
わたしは辻を思い出した。実を言えば、わたしはフードの影に追いかけられた時、種村ではなく、辻を思い起こしていた。天秤は辻に傾いていた。
「今、誰かのことを考えていたか?」
わたしは種村の指摘にどぎまぎした。
「あの、種村さん、わたし、現在、警察のストーカー対策課の人にいろいろ相談に乗ってもらってます」
「ふうん。そいつは頼りになるのか?」
「わたしは、そう思ってます」
種村は面白くなさそうに息を吐いた。
「怒ってますか?」
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