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8月16日
わたしをストーカーしていた平川宮子が逮捕されて、十二年前からの復讐劇を告白した。
あの時の宮子の拳銃には弾が込められていなかった。というより、意図的に弾が抜かれていたのだ。
弾を抜いたのは父親だった。父親は家の中で拳銃を見つけ、弾をあらかじめ抜いたのだ。
父親も薄々、宮子が何か良からぬことを企んでいるのではないかと、危惧していたらしい。
そして、父親はあれだけ探しても見つからなかった、ボイスレコーダーを見つけたのだ。
ボイスレコーダーはカンバスの中に巧妙に隠されていた。
父親はそれをわたしに手渡した。いずれ証拠品として、警察に提出する前に、どうしても聞いてほしいという父親の願いを汲み取った。
わたしは一人、部屋にこもり、ボイスレコーダーを再生した。
「た、助けて...。お願い...。ああ、苦しい...お姉ちゃん...。助け...て...」
亜美の叫びがわたしの耳朶を打った。
わたしは悲しさと悔しさのあまり、憚らずに号泣した。
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