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アトリエはわたしが生まれてから父親の聖域だった。だから、常に鍵がかけられていた。
鍵は母親が持っていた。わたしは一度だけ、母親におねだりして、アトリエを見たいと言ったが、母親は首を縦に振らなかった。
人には見られたくないものがある。亜美も人に知られたくないものがあったからこそ、事件に巻き込まれるまで、わからなかった。
宮子さんは扉の前でわたしを振り返った。わたしは緊張して、暑くもないのに汗をかいた。
扉が開かれた。
そこには画布がかけられたカンバスがあった。宮子さんが画布をかけたらしい。
宮子さんは再び、わたしを直視した。わたしが頷くと、画布を勢いよく払った。
わたしはカンバスの絵に釘付けになった。
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