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お嬢様はアレがほしい!
「あと一回、でいいの」
彼女は目を潤ませて懇願した。
ふわふわのブロンドが風に揺れる。同じ色の睫毛は、まるで星屑を散らしたかのよう。青い瞳は憂いを帯びて、頬はバラ色に染まり、まさにお姫様と呼ぶに相応しい美しさ。
名家の次女に相応しい、美貌と品性を兼ね備えた彼女。その彼女が今、僕に縋りつくような勢いで頼み事をしている。
「私、やっぱりどうしても諦められない。あと一回、もう一回……どうかお願いできないかしら」
「マリー……」
彼女が何を望んでいるのかはわかっている。僕が眉間に皺を寄せると、今度こそ彼女は“お願いよ!”と叫んできた。
「どうしても、どうしても忘れられないの。それなのに、この熱が、記憶が冷めてしまう時がくるのが耐えられない!貴方じゃなきゃ嫌なの。どうしても、どうしても貴方が欲しいの!」
「マリーでも」
「お願いよ!私、そうしたら私きっと、今度こそ前を向いて歩いていけるから、だから……」
こんな美しい姫君に頼まれて、断れる男などそうそういない。僕だってグラつきそうになっているくらいなのだ。でも。
こればっかりは、聞けない。聞くわけにはいかない。何故ならば。
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