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頭の中に、とあるイメージが湧いてきた。それは短い動画のようなもので、脳裏に強制的に映し出されていた。
「え、なにこれ」
忍が声を出す。
「忍くんも?」
「透子さんも、同じ映像?」
しばらく二人は歩道で立ち止まってしまう。流れてきた映像は、ある遊園地のもの。
観覧車があり、ジェットコースターが見える。メリーゴーランドや空中ブランコが回っていた。周りは山に囲まれていて、その場所がどこかのテーマパークだということがわかった。
「なにこれ」
透子が声を出したとき、隣りにいる忍は目を大きく開いて、驚きを隠せない様子だった。
「これって、柚葉ちゃんの」
「え、柚葉ちゃんって、以前助けたあの柚葉ちゃん?」
「そうだよ。間違いない。これは、柚葉ちゃんのセカイだ」
透子自身はセカイセンニュウなどできないため、忍から与えられた情報でしかセカイのことは知らない。にも関わらず、脳裏にはセカイの情景が映し出されている。それは本当に不思議な体験だった。
カメラで撮影しているように映像は進み、園内を歩いていた。一体誰がこの景色を撮影しているのか。
無人の遊園地を歩いていく。空中ブランコを通り過ぎた辺りで、フードエリアが見えてきた。そこには木製のベンチが置かれていて、ベンチの上には小さな女の子が横になっている。どうやら眠っているらしい。
「これって、柚葉ちゃん?」
「そうだよ。やっぱり、ここは柚葉ちゃんのセカイだ!」
忍は興奮気味に声を出す。
映像は柚葉の下へ行くと、彼女の隣りに転がっていた茶色いクマのぬいぐるみを掴んで持ち上げた。伸びた腕は異様に白かった。
「え? クマのぬいぐるみ? これって、柚葉ちゃんがいつも持っていたやつだ」
ぬいぐるみは小さな女の子が抱きかかえられるぐらいの大きさだった。
伸びた白い腕と、白い爪。カメラには揺れる白髪も映る。
『ふふふ。これで完成だ。長かった。あははは。僕はね、執念深いんだ』
その声には聞き覚えがあった。
透子は息が浅くなるのを感じた。閉ざされていた恐怖感が彼女の心を覆い始める。
「なんで、六道絢瀬が……、あのとき、倒したはずなのに……」
忍は声を漏らす。
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