第三章 四十九日

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 この遺影の私は、どう見ても今の私と同い年に見える。きっと健太が亡くなった時期に、この世界の彼もまたを失ったのだろう。  元の世界の健太も、この世界の健太もなぜこんなに苦しまなければならないのだろう。悪いことなど何一つしていないのに。私は、これ以上健太の苦しむ顔を見たくない。せめて、この世界の健太だけでも助けなければ……!!  この世界で最初にできること、それは玄関のスペアキーを探すことだ。もしかしたら案外簡単に開けることができるかもしれない。たしかスペアキーは戸棚の中にあるはずだ。  ゴソゴソと夢中になって戸棚を探し回っていると、突然「何をしてるんだい?」と声をかけられた。驚いて振り向くと、いつの間にか玄関の扉は開いていて、私の背後には健太が立っていた。 「健太! 体の方は」  私は健太の右手を見て、言葉を失った。
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