第四章 逃げた先には

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 逃げて、逃げて、逃げて。  頭の奥で警鐘が鳴り止まない。  もっと、もっと、もっと先へ。  息も絶え絶えになった私は、気づくと真っ暗な空間にいた。 「もう嫌だ。ここは、どこなの?」  クローゼットの中にでも入っちゃったのかしら? そう思って手足を動かすと、予想よりも随分と広い空間にいることに気が付いた。辺り一面真っ暗だけれど、どうやらここは外みたいだ。 「やっと、外に出られたんだ」  耳を澄ますと、かすかに水の流れる音が聞こえてくる。足もとが良く見えないので、ポケットに入れていたスマホで明かりをつけた。  そこには見渡す限り、真っ赤な彼岸花が咲き乱れていた。 その美しさに目を奪われていて、馬鹿な私はゆっくりと近づいてくる人物に気付かなかった。   「ケガはないか……?」  その声を聞いて、ビクリと顔を上げた。    
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