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第1話 虹色の雨
オースリッド大陸に昔から伝わる伝説がある。
雨上がりの空に虹が出たら、虹色の雨を700個集めると、どんな願いも叶えられる。
けれど雨上がりの虹は、近くにたどり着くまでに消えてしまうので、願いを叶えた者はごく稀だ。
5歳の時に両親がスバルを守って魔物に殺された。その時のショックで3日間眠り続けて目覚めた時には口が聞けなくなっていた。
身寄りのない少年は、ポンペルト村に身を寄せて、村人の手伝いをしながら、どうにか1日の糧を手に入れている。
10歳になったスバルは、教会の司祭様が話してくれた虹色の雨を探す為に、村を出ると決めていた。
身長が151センチと年相応だが、両親が亡くなってからお腹いっぱい食べたことがないので体はガリガリ。
髪の色は綺麗な青色で父に海の色みたいだと言われたが、スバルは海を見たことがない。
大きな瞳は空色で、見つめられると、その瞳に吸い込まれそうだ。
ポンペルト村の南西に位置するのがリュシオン王国で、北西にあるのが魔物の森。
それを西に越えていくと、雨の多いと言われるマケドニヴァ王国。
まずは虹を見つける為に、雨の多いマケドニヴァ王国を目指す。
魔物の森は、何となく名前からして魔物が出そうだし、リュシオン王国を抜けて行こう。
スバルは村の出入り口に立ち、一礼して、明け方こっそり村を後にした。
◇◆◇
スバルがポンペルト村を出てリュシオン王国の首都、リュボンの門にたどり着いた。
(ここがリュシオン王国)
スバルが知っているのは、村人の数が100人にも満たない小さな村だけ。
(皆、忙しそうだな)
スバルが知る村人は、ここの人たちみたいに、世話しなく動き回ったりしない。
「おい、雨の降る場所を知らないか?」
人の流れを目で追っていたら、同じ年頃の男の子に声をかけられた。
(マケドニヴァ)
スバルは口パクで答える。
『お前、口がきけないのか?』
少年はスバルが口がきけないことを察して手話で話しかけてきた。
(?)
スバルは初めて見る手話に首をかしげる。
「悪い、口がきけない奴全員が手話が出来る訳じゃないのか」
(手話?)
「ああ、言葉の代わりに手で会話するんだ。俺は隣ん家のばあちゃんのお陰で手話が出来るし唇も読めるぜ」
(へぇ)
「お前も虹の雨を探してるのか?」
(うん)
「マケドニヴァは雨は多いけど、行くだけ無駄だぜ」
(え?)
これから行こうとする目的地を、初っぱなから否定されてしまう。
「俺はマケドニヴァから、雨を探してここまでやって来たんだ」
ブラウンの髪と瞳の、少しガサツな印象の少年。
(でも、ここら辺に雨の多く降る場所なんて┅┅)
空色の瞳が、魔物の森の方角を横目で見る。
「あるんだな?ケチケチしないで教えてくれよ」
少年は馴れ馴れしくスバルの肩に手を置いた。
(ちょっと)
ケチケチって何だよ。こんな奴知るか。痩せ細った手が、肩に置かれた腕を振り払って、その場を離れる。
だが取り残された少年が、後をついてくる。
(何で後をついてくるんだよ)
スバルは口パクで文句を言いながら少年を睨み付ける。
「悪かったよ。何を怒ってるのか分からないけど、俺、よく人を怒らせちまうみたいでさ」
(もう、いいよ)
青い髪が左右に揺れる。
(魔物の森の真ん中にある湖は、雨が多いって聞いたことがあるよ)
「それって、本当か?」
(嘘だと思うなら行かなきゃいいだろ)
「怒るなよ。だっておかしいだろ?お前は何で、魔物の森に行かずに、リュシオン王国にいるんだよ」
(よく考えてみてろよ。魔物の森だよ)
口パクが少し早くなる。
「もしかして魔物が出るのか?」
(魔物が住んでるから魔物の森って名前なんだと思うけど)
よく知らないけど。
「だったら、一緒に行こうぜ」
(嫌だよ)
「虹の雨を探してるんじゃないのか」
(魔物の森に行くなら武器が必要だろ?僕にはお金が┅┅)
空色の瞳が不安げに揺れて沈黙が流れる。
「一緒に旅してた仲間がさ、俺を置いて逃げちまったんだ」
突然の話しにスバルは驚きと共に、同情の目を向ける。
「違う、違う。同情して欲しいんじゃなくて」
少年はショルダーバッグの中を探って、中からロングナイフを取り出す。
「そいつが獲物に突き刺したまま逃げていったから、やるよ」
スバルよりも日に焼けた手が、ロングナイフを差し出す。
(僕にくれるの?)
「ああ、一緒に虹の雨を探しに行こうぜ」
(うん)
ガリガリの手が、ロングナイフを受け取り握りしめた。
「俺はタケル、よろしくな」
(タケル?変わった名前だね。僕はスバル)
「ははは。お前の名前だって変わってるって言うか聞き覚えがあるような?┅┅まあ、いいか。じゃあ、スバル、食料品を買いに行こうぜ」
(うん)
2人はリュボン市場で安いパンや干し肉を買って、水筒に水をくんだ
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