0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
久しぶりに催された縁日に出向いたら、屋台やキッチンカーの立ち並ぶ場所から少し離れた所で、お化け屋敷が開かれているのを見かけた。
おどろおどろしいその外観と呼び込みの声に、小さな頃は結構な恐怖心を掻き立てられたが、高校生になった今はむしろ、これに入る物好きがまだいるのかという気持ちだ。
俺は入ったことはないけれど、入ったことのある人の話によると、ただ暗い通路を歩くだけ。その途中、バイトか何かのおどかし役が、壁から手を出したり、お化けの扮装で通路に姿を現したりする程度らしい。
それでも、小さな子供からしたら、お化け屋敷という響きだけで充分恐怖の対象だろうから、子連れなどが客になるんだろうな。
そんなことを考えていたら、見知った顔の数人組がお化け屋敷に入って行くのが見えた。
間違いない。今中に入って行ったのは、いつもあの顔ぶれでつるんでいる同級生の三人組だ。
追いかけて入る気はないけれど、昔聞いた話と仕様が変わっているかもしれないから、出てきたらどんな風だったか聞いてみよう。
そう思ってしばらく外にいたのだが、待てど暮らせど同級生達出て来ない。
時間もかなり遅くなってきたし、明日、学校で聞けばいいか。そう思い、俺はそのまま帰路についた。
だけど翌日、同級生達からお化け屋敷の話を聞くことはできなかった。三人が三人共学校に来なかったからだ。
念のため、他にあそこに入った人がいないかどうか、他の同級生達に尋ねてみたのだが、聞いた全員が、お化け屋敷なんてなかったと答えた。
それっきり、あの同級生達が学校にやって来ることはなく、聞いた話では、それぞれの家族が捜索願を出しているが、ずっと行方不明のままだそうだ。
あの日俺が見た、誰もが『なかった』と言うお化け屋敷。あの三人が帰ってこないということは、あれは存在自体がお化けそのものだったのかもしれない。
縁日のお化け屋敷…完
最初のコメントを投稿しよう!