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「リアルに『ざまぁ』な展開なんて起こせないの。だから私、あと一回夫が浮気したら殺そうと思ってる」
そんなポストがSNSのおすすめに流れてきた。
とんでもねえものおすすめしてくるな、なんて私は思ったけど、正直野次馬根性があったのでそのつぶやきをクリックする。
どうやら夫に不倫をされている、いわゆるサレ妻のつぶやきのようだ。
興味本位でそのアカウントを遡ってみる。どうやら彼女は、一年くらい前に旦那さんの不倫に気付いたらしい。
不倫疑惑の正誤、そして確証の為の証拠集め、フォロワーの叡智を借りながら進めていたようだ。
フォロワー達は、そんな彼女の旦那へ、スカッとするような社会的制裁を望んでいた。いわゆる「ざまぁ」を見たがっていたのだ。
しかし彼女の返答は冒頭のとおりである。
「夫の知人も、両親も不倫の事を知っています。会社ではどうか知りませんが、かなり仕事が出来る人なので、不倫くらいで地位が揺らぐことはないでしょう。だから夫の知り合いに暴露したってたいしたダメージはありません」
「離婚を突きつけたって、ただ、私に小金を握らせて、若い女と一緒になられるけです。それはそれで腹が立つ」
「ネットに顔とか晒してもいいんだけど、そうしたら離婚協議とかで私の方が不利になるかもしれない」
「だったらいっそ、殺そうと思ってる」
「悪いけど、ざまぁ展開はないから」
つぶやきは不穏なもので終わっている。
どう考えても殺す方がざまぁ展開より難しいと思うけど。何でそんなに殺すことにこだわってるんだろう。変なの。
最後のつぶやきは一週間前。
その後、最後の一回はあったのだろうか。
それにしても、晒したら自分が不利になるとか呟いていながら、結構情報を漏らしている気がする。
例えば、つぶやきの内容からわかることは、
・結婚五年目であること
・旦那さんは若くして課長となったやり手であること。
・お子さんはいないこと
・旦那さんの希望で専業主婦をしていること
などなどである。
さらに、旦那さんの職業内容やよく行くお店、よく不倫で利用するホテルまで書かれており、自ら晒さなくてもわざと誰かに特定して貰うように仕向けているのではないか、と思うほどである。
私はふと、ある事が頭を過ぎった。
これ、課長じゃない?
そう、うちの会社の課長に、これらの特徴はよく当てはまったのだ。
もちろん、課長が不倫をしている事を、私は知っている。
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