君と一生分の恋をしたい。

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屋上の扉を開けると、熱気が全身を包み込んだ。 マグマのような熱い地面を歩き、屋上の隅の日陰に座る。 自分の腕の中でうずくまっていると、段々落ち着いてきた。 改めて、図書館での出来事を思い返す。 如月海希。 それは、私の母親だ。 私が中一の頃、母と大喧嘩して、母は家を出て行ってしまった。 喧嘩の内容は、私の父親と離婚した話だった。 私には、小一の頃までそばに父親がいた。決して単身赴任などではなく、家族揃って家に住み、夫婦喧嘩や私と親同士の喧嘩もなく、屈託のない生活を送っていた。 __はずだった。 小一の冬、楽しい生活は唐突に幕を閉じた。 ある日の夜、眠れなくて親と喋りにいこうかな、と思った。 そして自分の部屋から出て、親がいるリビングダイニングに向かう。 すると、廊下から酷く残酷な影が見えた。 それと同時に、ガラスが割れる音が響く。 私は驚いて、何をしてるんだろうと廊下の扉の隙間から覗いてみた。 父と母がひどい喧嘩をしていた。 グラスを投げ、皿を投げ、二人とも血まみれになって…。 あまりにも酷い光景を見て、私は言葉を失った。 そういえばここ一ヶ月ぐらい、寝ようと思った時に親がいつも以上に喋る声が大きいな、とは思っていた。 ……まさか、こんなことになるなんて……。 翌日、母におはようと声をかけようと母の部屋のドアを恐る恐る開けると、母が泣きじゃくっていた。 何事だろうと、話を聞いてみると、 「……(うみ)が、家を出て行ったの……」 海とは、私の父親。 如月海(きさらぎうみ)
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