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私は覚悟を決めて、琉生にこれまでの出来事を話した。
「…あのね、琉生、私ね、ずっと琉生に黙ってたことがあったんだ」
「瑠奈が…如月海希って言ってたでしょ…、その人、私の母なの」
琉生は驚いて目を丸くした。
構わず、私は言葉を続ける。
「実はね……、私の曾祖母が、不思議な能力を持っていたの」
「それは、自分の命日がわかる能力。その能力は、曾祖母からずっと受け継がれてきたんだ」
「だからさ……私にもその能力があると思って。集中して考えたり、未来を恐れてたんだ」
「母は小説家だから…きっと母は、その能力のことを小説にして、みんなに伝えていたんだよ」
「私も母が小説家なのは知っていたし、瑠奈から母の名前を言われた時は本当に驚いたよ。家を出て行った時からずっと聞いてなかったから……。久しぶりに母の名前を聞いて…母のことを思い出して……悲しみに打たれた私を……琉生が…救ってくれて……」
あの日のことを思い出すと、涙が出てくる。
母と大喧嘩して、母が家を出て行ってしまったことをとても後悔して、公園のベンチに座って、泣きじゃくっていた。
そんな時、誰かが「大丈夫?」と声をかけてくれた。その人が、琉生だった。
私の泣き声は、段々大きくなっていく。
家から母を失った深い悲しみと、深い後悔。そして、そんな惨めな私を救ってくれた、優しい琉生。料理や洗濯を手伝ってくれて、放課後毎日遊んでくれて、楽しませてくれた、大切な人。
私が母に、なんで離婚したのなんて聞かなかったら母は……。
色々な感情が混ざりあって、次々と涙が溢れ出す。
「海緒……」
琉生は私の涙を優しく拭ってくれる。
あぁ、琉生は優しい、いつでも、ずっと、優しい。怒ったところなんて、見たことない。
ずっと一緒にいたい。なのに__
叶わない。
「泣いてる私なんて…嫌だよね……」
琉生はその言葉を聞いて、ぎゅっと私を抱きしめる。強く、強く抱きしめた。
その感覚は、今までに感じたことがないくらい、心地良かった。
そして、耳元で呟いた。
「俺は……笑顔の海緒も泣いてる海緒も…どっちも好きだよ……海緒の全てが好き……、どんな海緒でもいい…、つらいことは、なんでも頼っていいから……、一緒に抱えるから……」
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