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私の家から高校までは、歩いて三十分くらい。
夏はずっとひなたを歩いていて暑いし、冬は厳しい寒さに耐えながら登下校している。
これまで15回過ごしてきた夏だけれど、この夏はやっぱり不思議に感じた。
自分のローファーを見ながら、退屈に歩いていると、誰かが後ろから私を呼んだ。
「みーお!」
声の主は振り返らなくても分かった。
私は足を止めて振り返る。
そこには、満面の笑みの琉生が立っていた。
「海緒!おはよ!」
琉生はニッと笑った。
その笑顔に私の鼓動が鳴る。
琉生の少し焦茶色の髪が朝日に照らされる。
まるで映画のワンシーンみたいだ。
毎朝のことだけど、少し琉生の頬が赤くなっているのは私の勘違いだろうか。
あぁ、今日も琉生が生きてる。この世界にいる。
私は不思議と口元が緩んだ。
「じゃあ、行こっか。」
「うん」
私は琉生と並んで、再び歩き始める。
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