君と一生分の恋をしたい。

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しばらく一緒に歩いていると、琉生が私の頭を見ている気がした。 顔を上げると琉生は視線を逸らす。 なんだろう?と思いながら私はまた俯いて、自分のローファーを見ながら歩く。 しばらく歩いていると、また視線を感じる。 顔を上げるとやっぱり琉生は視線を逸らす。 「もうっ、なに?なんかついてる?」 私はむっとしてちょっと怒って見せると、琉生は頬を赤く染めた。 その表情に私の鼓動が鳴る。 彼をまじまじと見つめていると、私の頭の一部分を指差す。 「あ……えーと…ここ、寝癖」 指で差されたところを触ってみると、確かにぴょんと跳ねてるところがあった。 「え、やだー!恥ずかしっ」 口に手を当てて照れて見せると、琉生は頬を赤く染めて、独り言のように言った。 「可愛いなぁ海緒は」 ドクンと鼓動が跳ねた。 え…い、今…可愛いって言った!? 顔が一瞬にして真っ赤になるのが分かった。 「み、海緒…?」 私は琉生の顔を見た。視線が絡み合う。 琉生の綺麗に澄んだ瞳に、私の真っ赤な顔が映っている。 「…あ、」 琉生はやっと気づいたように手を当てて顔を真っ赤にする。 側から見たらラブラブのカップルに見えるだろうか。 このまま琉生と付き合えたら…?なんて…。 妄想が次々溢れ出してきて、より恥ずかしくなった。 しばらく時が止まったような感覚になる。 琉生が気まずい時間を突き破って言った。 「…早く行かないと遅刻するよ」 そういえば、今は登校中だった。 琉生に浸っていて、何もかも忘れてしまっていた。 「あ…そうだね…」 突然現実に戻された感じがして、少しガッカリする。 幸せな時間は一瞬で終わるものだから仕方がない。 ぼーっとしていると、不意に琉生は手を握った。 「いくぞ」 視線が合うと、琉生はにこっと笑って言った。 「海緒、朝からぼーっとしちゃダメだよ」 やばあぁぁ!心臓が爆発しそう…… 「え、あ、うん」 いかにも冷静そうに言ったつもりだったけど、どうしても驚きが隠せられない。 私と琉生は、手を繋ぎながら学校へと向かった。
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