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ちゃぷん、と。湯が波立つ音が聞こえて、犬飼はゆっくりと微睡みから覚醒する。
あの後、羽柴が甲斐甲斐しくも風呂に入れてくれたのだが、ようやくサブスペースから抜け出せたらしい。ぼんやりとした意識のなか、背後から抱きしめられる形で湯船に浸かっていた。
「蓮也さん、大丈夫ですか? ちゃんと満たされましたか?」
「むしろ、ヤりすぎだ……この絶倫」
あれだけやっておいて、何を言っているのだろうか。全身キスマークだらけで、下半身も怠くて敵わないというのに――犬飼は頭を抱えて返すほかない。
「はは……すみません。今日の蓮也さん、あまりにエロくてつい」
言って、羽柴がうなじに口づけてくる。ちゅっ、というリップ音が浴室内に響き渡り、犬飼はつい肩を揺らしてしまった。
「っ、こら」
振り向いて背後の男を見やると、まだどこか熱っぽい顔をしていた。視線が絡まって、ゆっくりとその顔が近づいてくる――のだが、
「Stay!」
犬飼はそんな言葉を口にする。
もちろん、Domが発するような効力はないのだが、羽柴は律儀にも言うことをきいてくれた。しょんぼりといったふうに眉根を寄せながら、「ううっ……」と耐えている。
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