298人が本棚に入れています
本棚に追加
先ほどまでとは打って変わって、まるで飼い主に叱られた犬のようだ。犬飼はフッと笑うと、込み上げる愛おしさに口づけてやった。
「君ってやつは、どこまで俺を惚れさせる気だ?」
そう上目遣いで続ければ、羽柴は目を丸く見開いて赤面した。こちらの体をぎゅっと抱きしめながら、感極まったように口を開く。
「蓮也さんこそ、どんだけ俺をキュンキュンさせれば気が済むんですか!」
「おい、そんなに抱きしめられたらっ」
そこで犬飼は言葉を失った。
何やら熱くて固いものが、腰のあたりに当たっているのだ。言うまでもないが、羽柴のものが性懲りもなく主張している。
「……羽柴」
「いや、その……これはですね……」
「まったく。君の方がよほど発情しているんじゃないのか?」
「す、すみません! 愚息がご迷惑をおかけしてすみませんッ!」
……対照的に当人は縮こまっているのが、ちぐはぐで面白い話ではある。犬飼はやれやれとばかりに肩をすくめた。
「まあ、わざわざ咎める理由もないが」
「!?」
羽柴が驚いたように、ガバッと顔を上げる。
本当にわかりやすい男だと呆れつつも、犬飼の口元は自然と弧を描いていた。
最初のコメントを投稿しよう!