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しばらくナイトマーケットで食べ歩きをしていたのだが、川沿いに人だかりが出来ていることに気づいて、ふと足が止まった。
「せっかくだし、俺らもアレ乗ってみません?」
羽柴が指さしたのは、川の上に浮かぶ手漕ぎボートだった。
犬飼も仕事仲間に連れられて、一度だけ乗った覚えがある。客引きをしている船頭と交渉して、ボートの上から灯篭を流すことができるのだ。
灯篭は蓮の花を模したような形状で、近くにいる子供たちが声高らかに売っている。二人はそれを購入したのち、さっそくボートへと乗り込んだのだった。
「わあっ!」
陽気な船頭の合図とともに、ゆっくりとボートが動き出す。羽柴はスマートフォンで写真を撮りながら、子供のように目を輝かせた。
川の流れは緩やかで、色とりどりの灯りが水面に煌々と反射している。すでに灯篭も多く流されており、羽柴ほどでもないが、つい見惚れてしまうものがあった。
「……綺麗だな」
この美しい光景を、最愛の相手とともに見られたことが嬉しい。犬飼は隣に座る男の顔を見上げ、ふわりと微笑みかけた。
すると、満面の笑みを返されてしまう。
「はい! 蓮也さんとこういった景色が見られるだなんて、すげー嬉しいっす」
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