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番外編 プロポーズといつかの夢(2)
「俺と……結婚してくださいっ!」
その瞬間、犬飼は大きく目を見開く。
羽柴が何を言ったのか、頭で理解するのに時間を要した。しかし、考えが追いついた途端、じわじわと顔に熱が集まっていき、胸の鼓動はもはや苦しいくらいになっていた。
「一生かけて、蓮也さんのこと幸せにします! だから、これから先もずっと一緒に……っ」
羽柴は必死な様子だった。なおも真剣な表情で言い募ってくるものだから、つい目頭まで熱くしてしまう。
自分との将来を考えてくれていたことが嬉しくてならない。犬飼は涙ぐみそうになりながらも――しっかりと頷いてみせた。
「ああ、喜んで」
灯篭を持つ羽柴の手に、そっと自分の手を重ねる。
一方で羽柴は何を言うでもなく、こちらをひたすらに凝視していた。
「羽柴?」
「す、すみませんっ! 一瞬、息が止まっちゃって!」
言って、またもや深呼吸を繰り返す。犬飼は眉尻を下げて笑った。
「また随分と大袈裟だな」
「そりゃ、大袈裟にもなりますよ」と一呼吸置いて、「……蓮也さん、本当に? 本当に俺でいいの?」
身を乗り出し、羽柴は確認するように問いかけてくる。
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