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「当然だろ。君以外、他に誰がいると言うんだ」
「だって結婚ですよ、結婚。誰かと一生をともにするって、そう簡単じゃないですよ?」
「だろうな。だが、それでも羽柴とともにありたい。……遠く離れてわかったんだ、俺は君がいないと駄目なんだと」
犬飼はきっぱりと断言してみせた。
羽柴は感極まったように深く息をついたのち、へにゃりと相好を崩す。
「う、わ……マジか。俺、嬉しすぎて泣きそう――蓮也さんの籍に入れるとか、もう夢みたい」
「おいおい。大の男がこんなところで泣いてどうする」
犬飼も決して人のことを言えないが、あえて茶化すような物言いをした。それから、羽柴の言葉を一つだけ訂正しようと思い立つ。
「それに籍なら逆だろ、逆」
「え……? でも同性同士の場合は、年長者の籍に入るのが普通なんじゃ?」
「一般的にはそうだが、俺には夢があるんだ」
やんわりと羽柴の手を離し、思いを馳せるように自分の灯篭へと目を落とす。あたたかな灯りに照らされながら、犬飼はずっと胸の内にあった願いを口にした。
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