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「いつか――羽柴が経営者になったとき、俺はその下で働きたい。君のSubとして、そんな日が来るのを期待しているんだ」
そうして灯篭を川に浮かべ、静かに手を離す。
願いを乗せたそれは、ゆらゆらと水面を照らしながら流れていき、あっという間に見えなくなった。そのさまを見届けたのち、犬飼は羽柴に向き直る。
かたや羽柴はというと、余計に真っ赤になってしまったようで、両手で顔を覆っていた。
「蓮也さん、俺より格好いいこと言うのやめてくんないかな。……俺、声とか上擦ってて情けなかったし」
「馬鹿だな。君の精一杯が伝わってきて、嬉しかったというのに」
「………………」
羽柴はぐうと唸って、押し黙ってしまう。
が、そのうちに踏ん切りがついたのだろう。勢いよく顔を上げると、あらためて灯篭を手に取った。
「……入社したての頃、右も左もわからない俺に、一番親身になってくれたのが蓮也さんでした。いつも叱られてばかりだったけど、この人のために力を尽くしたいと思っていたし、今でもその気持ちは変わりません」
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