第1話 鬼上司とポメラニアン(1)

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「わかっているじゃないか。代替がきくとはいえ、単にモノを受け渡しするだけでは話にならない。今すぐやり直せ」 「しょ、承知しましたッ!」  取引先との打ち合わせまで時間がない。慌ててデスクへと戻り、各種データの確認からやり直す。  羽柴は駆け出しの商社マンだ。資材や食料品・日用品など、多種多様な商材を扱う総合商社に勤めている。  何を隠そう、この春でまもなく社会人二年目。花形である営業部に配属されたまではよかったが、なかなか業務内容についていけないのが現状だ。  ガタイの良さと体力だけが取り柄のようなもので、社内のお荷物もいいところである。 (ううっ。気づけば毎日、犬飼さんに叱られてるような)  案件を任されることも増え、今も新規商材の取引先開拓のために奔走しているものの、どうにも先が思いやられる。  正直、期待に応えられない自分が不甲斐ない。いつだって、主任である犬飼にダメ出しを食らってばかりだ。それも鬼のような形相で。
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