第1話 鬼上司とポメラニアン(2)

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第1話 鬼上司とポメラニアン(2)

「あーやっぱり? あの雰囲気でコマンド使われたら、『もう好きにして!』って即オチしちゃいそうっ」 「Normal(ノーマル)なのに何言ってるの、もう。……まあわからないでもないけど」  どうやら、随分と好き勝手に話しているようだ。ちょうど印刷機に用があったらしく、こちらへと向かってくる。  何枚か覚えのない資料が紛れていたから、おそらくはそれだろう。「どうぞ」と羽柴は手渡しながらも、言葉を続ける。 「それと、さっきのちょっとセクハラっすよ」  あまり首を突っ込むべきではないだろうが、みすみす黙っているのも(しょう)に合わない。女性社員らは顔を見合わせていたが、次の瞬間にはギクリとした表情になった。 「え?」  羽柴がきょとんとしている間にも、そそくさと立ち去ってしまう。  なんだったのだろう――と視線を巡らせれば、途端に合点がいった。 「羽柴」 「ひゃ、ひゃい!」  噂をすれば何とやらである。自分は何も言っていないというのに、つい声が裏返ってしまった。 「あの、犬飼主任……もしかしてさっきの話」
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