1:ふたりの「変わり者」

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「そ、それはかなりやばいんじゃないでしょうか!? 翡翠(ひすい)さん、ぜっっったいに怒ってますよ。早く行った方がいいです!」 「あー、そうだな。手土産でも買って行こう。翡翠さんの好きな……なんだっけ、あのカラフルな最中(もなか)みたいなやつ」 「マカロンです! いい加減おぼえてください! っていうか、そんなもの買ってたらさらに遅れるのでとりあえず駆け付けたほうがいいですって!」 ぐいぐいと背を押され、戸口に追いやられる。おれよりも背丈はずいぶん小さいが、力はだいぶ強くなったものだ。感心しながら、トレーニングウェアを脱いで手近にあったTシャツに手早く着替え、「洗濯は帰ったらする」と朱雀に伝えた。 「それくらいやっといてあげますから。いいですか、超特急ですよ。でも人は轢かないように! 街や車を破壊しないように!」 朱雀は至極真面目な表情でそう言った。それもそのはず。彼は冗談を言っているわけではなく、おれを見送るときの必要注意事項を告げているだけなのだ。 「わかった。気をつける」 ひらりと手を振って扉を閉める直前、「本当に大丈夫か」という文字を顔に貼り付けたような、微妙な表情がちらりと見えた。
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