どこでもスメル from 雅也

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どこでもスメル from 雅也

今日の午後は雅也がいない。 せっかく仕事が休みの日なのに、高校時代の野球部メンバー、一樹くんと遊ぶために出かけてしまったからだ。 どこへ行くのと尋ねてみたけれど、まだ決まってないと誤魔化されてしまった。本当に相手は一樹くんなのよね? とみのりは疑ってみる。 雅也はこれまで浮気なんかしたことないはずだから、一応、信じてはいるけれど……。 これでもみのりは野球部のマネージャーだった。だから、チームメイトの一樹くんのことはよく知っている。どうせなら、自分も遊びに連れて行ってくれればよかったのに、と思う。 「まあいっか。明日どうせ、雅也と吉祥寺まで出かけるんだし。今日はひとりを満喫しようっと」 いっそ自分も友達を誘って、ショッピングにでも繰り出そうか。そうだ、そうしよう。家でウジウジするより、そのほうが自分らしい。 スマートフォンで連絡先一覧を確認する。 画面をスクロールしながら、この中でいちばん暇そうなのは……なんて失礼なことを考えているとーー。   ブブ、とスマートフォンが震えた。 メッセージが送られてきたみたいだ。 通知を見ると、送信元は雅也。 いつも使ってるSNSじゃなくて、「どこでもsmell(スメル)」を通して送ってきたようだ。 どういう風の吹き回し? とみのりは首を傾げる。こんなこと初めてじゃないだろうか。 以前、雅也に「どこでもsmell(スメル)アプリ」をすすめたことがあったけど、あまり興味がないようだった。アプリをインストールしているのを見たので、てっきり日常的に使ってくれるものと思って、専用アクセサリまでプレゼントしたのに。 今更、何を思い立って使う気になったんだろう。 みのりが好奇心のままにメッセージを開くと、 文章に「スメル」が添付されているのに気付いた。 「ん? 何のニオイを送ってきたんだろ。どれどれ」 ぽちっと「スメル開封」をタップする。 瞬間、ふわっとあたりに何か広がって……。 「うっわ、何このニオイ! くっさ、ちょっとヤダもぉ何なの雅也っ。嫌がらせのつもり? 私がぶりの照り焼き焦がしたから? ほんともーー……」 ひとりで喚きながら、みのりは気が付いた。 鼻を刺激するニオイが、脳に何かを訴えかけている。 雅也は、嫌がらせでこんなニオイを送ってきたんじゃない……? 頭の中をよぎった何かが、それを伝えてくれる。 このニオイ、
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