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母・美沙子(みさこ)
「なんで近くに居るのが真樹なのかしら」
美沙子は目に涙を浮かべ、ため息をついた。
いつも優しくて、自分を最優先に考えてくれた夫。
彼が病死してから一年が経とうとしている。
長女の美樹はちゃんとした会社に勤め、
孫や婿と他県で暮らしているにもかかわらず、毎日電話をくれ、
毎週車で帰ってきては自分をレストランに連れていってくれる。
なのに次女は‥‥‥。
電話をすればいつも冷たくて、頼んだものを玄関先に置いて数分で帰ってしまう。
「あんなだから旦那さんとうまくいかないのよ」
老いた実母が悲しみのどん底にいる時くらい、もう少し心を砕いてくれてもいいのではないか。
イラストの仕事だか何だか知らないけれど、いつだって家にいるくせに。
呼び鈴が鳴った。
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