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サンドイッチ
「ちょっ! あなた傘は」
「折れちゃったの!」
「待ってよそのまま上がる気? バスタオル持ってきてあげるから」
「ここに置くから」
「やだ待ちなさいって!」
びしょ濡れの真樹は、水を含んだサンドイッチの袋を敷き込みのカーペットに落とした。
「何やってんの濡れるでしょう⁉」
「もう腕が上がらないのよ」
「はぁ?」
「もう持ってられないの」
「何言ってるの、え?」
袋を拾って顔を上げると、真樹の姿は消えていた。
訳が分からず中を覗いた美沙子は、口を大きく開けたまま袋を放り出し、尻をついた。
あれほど激しかった雨はいつの間にか止み、
騒々しい蝉の声と共に異様に明るい陽が差し込んでくる。
それは、サンドイッチの袋に飛び込んだモノをはっきりと照らし出していた。
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