本編

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と、互いの特徴や境遇を話してみたが、 俺は川瀬が大嫌いだ。 目の上のたんこぶと言っていいくらい、 同年齢の川瀬と常に比べられていたからだ。 俺も川瀬も一人っ子。 簡単に行き来できる距離に住み、 母同士が血の繋がりのある関係だからか、 頻繁に食事の席が設けられ 遠出をする機会があれば必ず一緒の行動。 母に、 「ゆきちゃんは素直でかわいいわねー」 「って葵、何て顔してんのよ。ゆきちゃんより 誕生日が早いんだからお兄ちゃんらしく 優しくしてあげなさい」 と言われ、手を伸ばしてくる川瀬に 渋々手を差し伸べていたのを思い出す。 「ありがとう!あおいくん」 「ちっ」 邪心のない川瀬の微笑みに触れ、 やさぐれモードになってしまうのは 仕方のないこと。 「こっち来んなよ」 「やだ、待って」 こんな風に嫌いな奴に追いかけられて、 拗らせずにはいられないだろ? 子供時代は、川瀬のせいで真っ暗だった。 だから川瀬のことは好きになることはない。 ただ、今は180センチを超える長身と 海外経験皆無なのに流暢すぎる英語、 文句なしの運動神経、 そしてスマートで柔らかな物腰に対して 少しだけ眩しさを感じるだけだ。
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