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3月5日。
晴れやかな気持ちで卒業式を迎える
クラスメイトに紛れて、
俺は苦虫を噛み潰したような顔を晒す。
「岸野、大学でもよろしくな〜」
強引に肩を抱いてきた佐橋雄大を睨みつけ、
佐橋のすぐ横で笑いを堪える宮嶋恭介に
「絶対にお前たちとは喋らないっ!」
と息巻いた。
宮嶋の隣には遠慮がちに寄り添う川瀬。
「葵、機嫌直して」
川瀬に微笑まれたが、俺はそれには答えず、
佐橋の腕を振り払うと先を急いだ。
来月からまたこのメンバーと顔を合わせる。
全く気持ちが切り替わらない。
川瀬に至っては、同じ学部だ。
ああ、ムシャクシャする。
1日も早く、願望を形にしたい‥‥
俺は小走りで敷地内の駐輪場に向かい、
自転車に跨った。
「葵」
川瀬が少し遅れてやって来たが、
それを無視し、自転車を走らせる。
校門を抜け、緩やかな坂を下り、
これでこの道とはお別れだと感傷的に
なることもなく、スピードを上げていく。
帰ったら早速、初出勤の準備だ。
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