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「お、引きこもりドキュメンタリーのつもりが、恋愛ドキュメンタリーになるのかぁ?」
達也が面白がって手を繋いでいる二人の周りをグルグルと回って撮影する。
「変なこと言うなよ。そんなこと言うならもう撮影の許可はしないぞ」
雄一が右手でカメラの画面を押さえていった。
「あぁっ! せっかくいいショットだったのになにすんだよ」
達也は文句を言いながらもふたりから離れて笑い声を上げる。
それから気持ちよさそうに空気を吸い込む音が聞こえてきた。
「はぁぁ! 夜の散歩もいいもんだなぁ。人が少なくて歩きやすい」
「達也、民家もあるんだから声量に気をつけろよ」
「だって、俺だけ誰とも手を繋いでなくて寂しいんだもん」
「なにが『寂しいんだもん』だよ。可愛くねぇんだよ」
「ふふっ。達也、私と手つなごうか?」
夏美が達也へ手を指し出す。
「え、マジで!? いいの!?」
「もちろん。両手を繋いでもらっていた方が、私も安心するし」
「だ、そうです! だからこれは夏美ちゃんを助けるために必要なことなんです!」
達也は自分の顔を撮して熱弁したあと、右手をズボンでふいた。
「じゃ、じゃあ失礼します」
達也が夏美の手を掴む。
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