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「だったら尚更取り直しとか必要ないんじゃないか?」
「いいから、早く自己紹介してくれよ。進まないだろ」
促された雄一が大げさにため息を吐き出してカメラを向く。
このドキュメンタリーを撮影する前はカメラだって全然興味がなかったくせに、いざカメラマンになってみると達也はやけに張り切っている。
とはいえ、大学で人に見せるものなのだから随所にこだわりたい気持ちはわからなくもなかった。
雄一は照れくさそうに頭をかきながら「俺は山崎雄一です。えっと、撮影者の達也とは大学の同級生です」
「はい。それじゃあ雄一、今日は誰を俺に紹介してくれるんだ?」
「俺の幼馴染の三浦夏美です。夏美とは幼稚園に入る前からの付き合いです」
「よっし、いいぞ。それじゃドアをノックして開けてくれ」
「やれやれ。ずっとこの調子でやるのか?」
呆れながらも部屋のドアをノックする雄一。
中から「はい」と、少し緊張した女性の声が返ってきた。
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