シーサー

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 初めて訪ねた友達の家の玄関先には、一対のシーサーの置物が飾られていた。  これを置いている家はたまに見るけれど、友達の家もそうなのか…程度の気持ちで屋内へ入ったら、下駄箱の上にもシーサーの置物が飾られていた。  さっきより一回り大きなサイズのシーサー。友達の口から沖縄の話が出たことはないので、多分家の人が沖縄好きか、単純にシーサーが好きなのだろう。  深くは考えず、通されるままに家の中を進む。その途中で目に映る、あちこちに置かれたシーサー。  廊下、チラと見えたリビング、台所…色んな所にシーサーが飾られている。しかもそのサイズが、玄関先から順番に大きくなっている。  さすがに、辿り着いた友達の部屋にはシーサーはなかった。それに安堵していたのだが、部屋に入ってからずっと、壁一枚隔てた隣の部屋から、何か唸るような物音が聞こえてくる。 「なぁ、なんか、隣から音が…」 「ああ、大丈夫。何でもないんだ。二体共、知らない気配に興奮してるだけだから。でも、例えば俺がトイレに立った時とかに、隣の部屋に入ろうとかは絶対しないでくれよ。俺の友達だけどあいつらには見ず知らずの相手だから、護り神の本能で襲いかねないから」  隣の部屋にもシーサーが? それも、これまで見てきた置物のサイズと、聞こえる物音…唸り声からして、かなり特大の奴だよな?  というか、置物が唸ってる?  色々と聞きたいことだらけだけれど、この場合、一番最適な俺の対応は、『あえて何も聞かず、なるべく早くこの家から出る』だろうな。 シーサー…完
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