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3話 母が亡くなってからの私、そして兄は
母が亡くなって、父も私も生活が変わり大変だった。
最初は、父が頑張って夕食を作っていたが、メニューを考えるのも大変だったので夕食セットを頼むことにした。
それなら、レシピもあるし私でも作れると思った。
気持ち的には、主婦歴40年以上なんだけれど…
13歳の私には、手が思うようにならない。
過去に戻るまでの私は、慣れっこだった包丁も、うまく使えなかった。
父は次第に帰りが遅くなっていった。
一人で夕食を作り、食べる日々。
兄は高校を中退し、仕事もせず遊んでいた。
ある日、学校から帰り兄の部屋をのぞくと、新聞紙の上に髪の毛がごっそり置いてあった。
驚いたけど…
昔、こんなことがあったな…と思い出した。
確か…この後に兄が帰って来てあまりに可笑しなことを言うから、慌てて父に電話したんだった。
それから、私が夕食を作っていると兄が帰って来た。
過去の通り、兄の髪の毛はツルツル坊主になっていた。
部屋の髪の毛は自分で剃ったあとの残骸だったのだ。
それから、夕食のきんぴらごぼうを作り、味見をしていた時に
兄が、のっそりと部屋から出てきて
「美味しい?」と気持ち悪い笑みを浮かべて言ったのだ。
兄とは会話もなかったし、そんなことを言ったこともないのに…
あまりに様子がおかしかったので、本当は叫びたかったが
怖くて声が出なかった…
それから、私は過去の通りに父に電話をする。
「お兄ちゃんがおかしい。すごく気持ち悪いの、早く帰ってきてー」と言った。
父が帰るまで、家にいるのが怖くて、私は外に出て待った。
この時の兄は、シンナーでおかしくなっていたのだ。
過去にもう一度、経験しているのに、やっぱり怖いんだな…
それからの兄は、どんどんおかしくなっていった。
友達と学校から帰り、家の前で喋っていると
兄が急に窓を開けて、シンナーでボケた顔で
ゆっくりと頭を下げ、またゆっくりと窓を閉めたり
私は恥ずかしくて…
こんな日がいつまで続くんだっけ?と考えた。
過去の細かいことは覚えていない。
でも、過去ではこの後で、
父が親戚に相談をして精神病院に入れようという話になったような気がする。
それがいつなのかは、分からないが
このままいけば、いつかそうなると信じるしかない。
本当に何もかもが過去の通りになるのか…
それも分からなかったけれど…
とにかく成長して大人になって「あの人」に会うんだ。
私を支えていたのは、そのことだけだった。
この気持ちを、ずっと持ち続けることにも不安はあったが
私が強く思っていなければ叶わないから。
それから数か月たって、精神病院に入れると言われた兄は、しびれてシンナーを止め、親戚の中華料理店で働くことになった。
あと何年、分かっている過去をやり直さなければいけないのかな…
私はまだ13歳…
「あの人」に会うまで、あと26年…
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