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が、……なぜか俺は呼び出されている。依頼したコンビニから荷物を預かった宅配業者の集積所へ。
何でこっちがわざわざ出向いているんだろう。その疑問符でいっぱいである。心配そうな、ともう枕詞になってしまった表情と共に、大塚がついてきてくれたのは嬉しい誤算だが。
「だから、ゴルフに間に合わなかったんだけど」
「はあ。〇月×日にお預かりしたゴルフクラブが現地に届かなかったと」
「だから、その後の経過は?」
「はあ。探してます」
「でもいまだに行方がわからない?」
「はあ。そのようです」
一応責任者が出て来たが、俺が受付で「一体どうなってるんですか?」と声を大きくすると、奥の応接室へ通された。
しかし、茶一つ出てこない。別に一滴だって飲みたくもないが、神経を逆なでされまくり。
指定日時に指定場所に届かなくてその後連絡もなくて物は行方不明。その状態を繰り返し説明させられて、返事は「はあ」「そうですか」「なるほど」ばかり。自分の責任じゃないしクレーマーだから適当に相槌打っておけばいいや。いかにもそんな態度で。
売り言葉に買い言葉的に、俺も態度が硬化した。
「とにかく! 宅配往復便で申し込んだ送料は当然返金になりますよね? それにレンタルしたクラブとシューズの代金、負担してくれるんでしょうね?」
「……はあ、……えっと、ゴルフ場様にうち宛の領収書を出してもらってきてください」
「はあ?」
何言ってるんだ、こいつ。何で本来は全く必要なかったそんな手間を、こちらが背負わなくちゃならんのだ。俺はついに両手を勢いよく上げ、机を――
バーン!
が、先にぶっ叩いたのは大塚だった。
「あなたね。わかってます? あのゴルフクラブは仕事道具なの。この人は来週再来週その次とずっと接待ゴルフの予定が詰まってるんですよ。見つからないというなら新品購入しますからね。その領収書も回していいんですね?」
お、……おお? 俺はそこまで考えてはなかったが。
「はあ……」
しかしやっぱり責任者は「オレのせいじゃねえのに」といった他人事の表情を崩すことはなかった。
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