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何てこった。
サイズの合わない古くてダサいシューズ。ブランド名だけは聞いたことのある型落ちの高級クラブ。
ボールや手袋は売店で買った。ティーは同行の田端が貸してくれた。
でも、絶対自分じゃ買えない値段のドライバーにワクワクするどころか、レンタルじゃ飛距離が読み切れない。マイクラブの少々根性のねじ曲がった反発性や曲がり癖に慣れていたせいだ。不安を抱えたまま振ってみれば、そのメンタルは正直にスイングに乗って、空振りだの天ぷらだの尺取りだの。
「今日は高田さんにみっちり教えてもらうつもりだったのに……やっぱり調子出ないですよね……」
大塚が、心配そうに言ってくる。その小首をかしげた様子が可愛い。
そう、密かに好意を寄せていた1期下の大塚あかり。先日ようやく声をかけることに成功した。ゴルフなら1日一緒、腕に自信があるわけではないが歴は10年を超えるので、初心者の大塚に手取り足取り、仲を深める大チャンス――同期の田端とその彼女の目白が企画してくれたダブルデートだというのに。
いいカッコを見せようとした目論見は、いきなりガラガラと崩れてしまった。
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