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……大塚って、そうだった、所属はお客様サービス部だった。年がら年中、何らかの苦情に対応しているわけで、つまりプロ。IT資産の活用サポートという技術系、つまり主に機器が相手の俺や田端とは違う。
「私なら、1時間おきに高田さんに経緯報告します。何も進捗はないとしてもそのたびに謝罪の意を示します。お怒りも『ありがたいご意見』として拝聴しますよ」
そうだよな。思えば会社に勤めるようになって、まあ理不尽なことが多くて、さらされまくっているうちに怒りを抑えがちになっていた。表面上、穏やかに落ち着いた対応を心掛けないと、怒りは怒りを呼ぶと自覚したから。が、今回のことに限っては、噛み殺す必要はなかったか。
安物でも根性曲がりでも、愛着のあるクラブだ。これからも上司とも客とも、……ひょっとして大塚と一緒にだって、使う機会は数限りなくある。
俺は大塚の勢いに背を押され、その場でまた電話をかけた。
「見つからないならそれと連絡いただきたいのですが」
でも俺って穏やかに落ち着いた大人の対応ができちゃうしな――
「え? まだ見つからないんですか?」
またその返事かよ? しかも200%悪気のない、世界一無邪気な、限りなく爽やかなトーンで。
――ぷすぷすぷす、ひゅるるるる……どかん。
ささやかながらも俺の中の導火線は確かに着火、爆発。
「あんたじゃ話にならない! 上の人、出して!」
声を荒らげ電話を切った後、自分の爆炎にドクドクしてきた。大塚が両手を組んで俺を見つめてくれているのが、心強かった。
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