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そうしてゴルフ道具売り場で試打を重ね、気に入った新品クラブセットを見つけ。まさにレジへ持っていこうとしていたその絶妙なタイミングで。
「見つかりました。別の便に紛れていたようで稚内に行ってました」との電話が入った。
稚内? 俺らがゴルフしたのは茨城なんだが。何がどうしてそうなった。
てか、早いじゃねーか。行方不明荷物の追っかけはあれだけグダグダしてたくせして。
「ええ~何で今見つかるのよ。このクラブ、絶対高田さんに合ってるのに」
大塚は残念そうだ。その高級クラブセットの中でも特にパター、すごく手になじんで、飛躍的にスコアが伸びそうな気がした。しかもそのカバーとして「ち〇か〇」を選んでかぶせていた大塚。いやそれ、ドライバー用のだから形合ってないけど。と、俺はこっそりドライバーへかぶせ直していたんだが。
ま、俺としては不憫なマイクラブくんたちが戻ってくるならそれでいい――
――のか?
金額的に損はしなかったものの、ゴルフが楽しめなかった賠償もぶんどればよかったか、と思うほど後処理に不満が残る。
「これだけ大規模な宅配便会社なら、これまでだってこういった事故はそこそこ起きたことがあるはず。だから対応マニュアルがあってもおかしくないのに。うちの会社にだってあるわよ」
「これがマニュアル通りだったらビックリだよなあ」
「だとしたらこの会社、潰れますね」
「だよなあ。せめて『大変でしたね、申し訳ございません』くらいの言葉一つあれば俺だって『そちらのお仕事だって大変だから、こういう事故もあるよな』とか思えたんだよな」
そう、そういう対応だったらこっちもここまでヒートアップしなかった。クレーマー扱いされた不愉快さは一生忘れんぞ。
「手作り晩御飯」は居酒屋飲みに変更し、飲み放題プランで二人、延々と愚痴り倒した。
「届け物をするための会社なのに、『大事なお荷物をちゃんと届けたい』って気持ちが微塵も感じられなかった!」
言葉を変え言い方を変えながら二人で喚き散らしたが、結局はその一言に尽きる。
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