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「ピンポーン、お届け物です!」
この声は。
ドアを開けるとやっぱり大塚。
週末ごとに一緒に料理しようとアパートに来るようになっていた。でも、今日は週の真ん中。しかもそのセリフ、何のこっちゃ?
「はい! もうすぐお誕生日でしょ!」
そう言って大塚が差し出したのは、リボンを結んだあの新品パターだった。
「やっぱり欲しくてこの一本だけ自腹で買っちゃった! で、一刻も早く届けたくて!」
……「〇い〇わ」のクラブカバーが無理やりかぶせられている。だからそれ、ドライバー用のだってば。
けれど大塚の満面の笑みはまばゆく神々しかった。頼りがいのある(ありすぎる?)俺の女神だと確信した。
うん。不快な思いをしたものの、得られたものは大きかった。この際、カバーが何でも構わない。
確か、大塚の誕生日は冬だ。そのときにはアクセサリーかなんかをプレゼントするとして。とりあえず、今は。
「これ、同じのを君にも贈りたい」
大塚が超気に入っているそのカバーをお揃いにしようと提案した。大塚の顔はさらに輝いた。
「今すぐ行きましょ!」
言うと思った。だから俺はもう靴に片足を突っ込んでいた。
たぶん。あの日普通にゴルフができたとしたら、大塚とはこうトントン進展はしなかった。そういう意味では雨降って地固まる……?
ま、その宅配業者を使うことはもう二度とないだろうけど。
(終)
(注:この話は一部事実に基づいていますが、宅配業者さんのほとんどはちゃんとしています。いるはずです)
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