伊勢見“清掃”事務所

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 エレベーターに乗り込み、一つ下の自分の事務所出はなく十階から十八階のボタンを指でなぞる。会員制のためカードをかざしては適当にボタンを押した。  すると、スマホが鳴る。手に取るやダストの名前。用件かと耳に当てるも『そういやさ、一応何も無いタワマンとか言いながら店とか施設とかやってるだろ。その一部のホテル業の宿泊リスト見たら引っかかるやついるから確認してきてくれ』と同じことを考えていたのか。思わず十階のボタンを押しフロントへ。 「よっ」  バインダーを持ったダストがフロントで伊勢見を客のようにもてなす。バインダーには宿泊者の名前と電話番号。名前は本命ではなく殺し屋としての名前。  一、二と紙を捲り、三枚目で手が止まるや「あら、悪名高いお方いますね。確かこの人は“殺し屋を殺す方”でしたか。一般人には手を出さない変な人」と宿泊している番号を確認。 「お前も人のこと言えないだろ。そろそろ人雇った方がいいんじゃねーの? 一応、ダークウェブで管理して宿泊はスマホとかで済ませてるみたいだけど頭使えよ、もう少し」 「おバカさん、僕はもう一つ意味あって一部宿泊用にしてます。この階の下に殺し屋専用の武器・洋服屋を数軒入れてまして、会員制なのでカード持ちじゃないと入れないようにしてます。なので、少しはいいかと思いますよ。新規はカード持ちといっしょに来て頂いて、それなりの腕利きか試させてもらいますけどね」  煽るダストを気にせず気持ちを伝える伊勢見。 「なるほど。だったらハッカー雇えよ。その方が安心するだろ」 「そうですね。ですが、僕は孤独なのでお願いしたくてもいませんよ」  薄く笑いながらバインダーで一発ダストの頭を叩く。いきなり叩かれ困惑するダストだが地雷を踏み抜きたことに気づいたのか、カウンターを飛び越え走り出す。 「ほら、さっさと小さな案件こなしてきて下さい。僕は此処のしますから」
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