伊勢見“清掃”事務所

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 なんて彼は言っていたが来ない。  基本、九時から電話受付と決めて入るが部屋にいるのは伊勢見のみ。三人は口を揃えて「タワーマンションの上階で見下してるのか気持ち悪い」だの仲良くなる前は文句だらけの酷い空間。とはいえ、知り合って数年経ったせいか無断欠席・遅刻を除けば仕事こなしは悪くない。 「あれま、ズルですね。これは……」  お気に入りの黒いマグカップにお湯を注ぎ、景色を見ながら寂しく飲む。それを何十分、何時間。景色な好きなのか、飽きるほど楽しんでいるとドアが開く音が聞こえた。 「仕事はこなしましたよ。出来の悪い息子を殺してくれ、と。新聞には記載されてはないですし、何か文句でもありますか」  振り向きざまにデスクに置いていた新聞を見るや記載されているのは伊勢見の部下が数ヶ月前に手に掛けた【身元不明の白骨死体】。  発見場所は【とある権力者の土地】。現在、所有者に事象を――の文を黙読しては思い出したように言う。 「あぁ、すみません。別件のお客様がアナタに対して復讐したいと。ですからこれは……濡れ衣ですね」  ニコッと悪びれない彼の笑みに、腹を立ててきた小太りの年配の訪問者は「ふ、ふざけるな!!」と口を出す。 「ふざけるな。その言葉はお返しします。権力者ならではの潰し合い。僕は好きではない。確かに殺し家系ですが僕は好きでやってる。道具ではない。強いて言えば、お金で動いてくれる何でも屋だと僕のことを思っているようですが、金で動いているわけではない。断ることだってありますよ。年配者を敬え、とよく言われますが――嫌いなんで」
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