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マグカップをデスクに置き、新聞を手に取っては訪問者は眼中にないと無言で読み始める。伊勢見にしたら権力争いで雇われるのは構わないが【〇〇を殺してほしい】と頼まれれば、次はその対象の人物に【〇〇の口を封じてくれ】と板挟み。それが単に嫌で面倒だと口下手な彼は言いたいだけ。
しかし、説明下手なのか「誰に雇われたっ……この裏切り者!!」と権力者ならではのセリフに鼻で笑うや新聞を下ろす。
「裏切り者なんてとんでもない。僕は――」
デスクを訪問者に向かって蹴り飛ばす。軽く怯ませ、袖に隠していたナイフを握っては背後を取り、首に刃を食い込ませる。血が出るか出ないかの絶妙な力具合に訪問者は声が出ず、伊勢見も伊勢見で無言。
静寂が支配し秒針が寂しく部屋に鳴り響くと面倒くさそうに「話が通じなさそうなので死んでください。アナタの悲鳴は汚いと思うので――」と話を聞く価値もないそう思ったのか、容赦なく首を斬る。
「あっ……がっ……」
声にならない声。
「ほら、汚い。当たりましたね」
痛みにもがき、口と傷口からドバドバと滝のように血が流れ、力なくその場に訪問者は倒れては血がじんわりと大理石の床を染め上げた。
伊勢見は無言で刀身を胸ポケットに入れていたチーフで丁寧に拭き、何もなかったように戻す。かすかに聞こえるもがき苦しむ声に伊勢身はポケットから四分の三食べかけた板チョコを取り出し、一欠片口に含む。だが、美味しくないのか渋い顔。
「おはっしゃーす」
タイミング悪くまともに挨拶できないブレイクの声に伊勢見は「おはようございます。すみません、この汚いゴミを処理してください」と顔を向けず言葉と指で指示。
「うわっ……伊勢見さん、人殺してる。え、朝だよね。ねぇ、ブレイク……」
「あーフロント強引突破したおっさんね。俺の親切な言葉を聞かずに社長に直談判とは馬鹿なやつ。ブレイク、片付けるぞ。ジャンク、お前は掃除な」
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