伊勢見“清掃”事務所

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「も、もしかして……事務所にしているのは家族から逃れるためなんですか」  その鋭いジャンクの言葉に伊勢見は一瞬ガンを飛ばす。人を殺すような殺気放たれる視線に「ひぃ」としゃがみ、姿が見えなくなると「そうですよ。家族から逃げてるんです。少し変わってますから分かるでしょ?」と優しく言いながら一発デスクを殴る。  喜怒哀楽が激しい伊勢見にジャンクは腰を抜かしたのか、足を滑らす音に小さく笑う。 「お菓子食べてきてください。二人はそろそろ戻ってくると思いますので」  郵便物に手を伸ばし、走り去る足音をよそに目を通す。案件が数件と水道光熱費、その他支払い、家族からの悪口が数枚。破り捨てたと思いきた追い悪口。主に悪口は“弟”で家族に愛されてるだの、兄は捨てただの、意味わからないように丁寧に折りたたみ、ナイフでデスクもろとも突き刺す。  その後、仕事になるものを難易度順に並べては受けるにしては好ましくないモノを仲介屋宛の封筒へ詰め込む。  伊勢見は受けたい案件が日よって大きく変わるため、一度目を通して保留にするか、受け流すかを決めている。基本は仲介屋からのモノで本人から直接来るものではない。  電話受付、商談等で来るのなら話は別だが郵便物には期待はしてない。憎しみ、恨み、復讐――確かに殺す理由としては十分なのだが彼が見ているのは“標的”。そこでやるかやらないかを決めている。 「伊勢見、その様子だと気に入らないみたいだな」  ドア開閉に気づかず、視線を正面に向けるとダスト。タバコのラムネを咥え、ニヤニヤしながら手紙に目を向けていた。 「ん、仕方ないですよ。僕の殺しは普通の殺しではないので……ってブレイクは?」 「化学反応で強化した液体をドラム缶にぶち込んで死体を突っ込んだのを楽しそうに見てる。もう少しで来ると思う」 「あぁ……溶かしてるんですね。分かりました。僕が受けたい依頼がないので三人で殺したい案件あったら選んでください」  折りたたみ、ダストに手紙を渡すや刺さったままのナイフを嫌嫌ながら引き抜く。
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