挑戦者は何を想う

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 当然だが、褒められるだけで人は延びないのだ。特に公募ならば、単なる文章力のみならず、その公募のカテゴリーに合わせる努力も求められるのだから。 「あと。専門学校に行くのがダメだとは言わないけど、大学言って普通の企業に就職して、それでも書き続けるってのも覚悟なんだからね?そういうところに行ったら小説の勉強ができないと思ってるならそれは違う。私が社会人になってから書籍化したみたいにさ」  これは間違いない。  大学の経験や会社での経験は、小説を書く時のネタになる。ネタができればますます書きたくなり、多少自由時間が短くてもやりくりする努力をしようとするのが人間だ。  人生が豊かになることは、小説家としてだけじゃなく、自分を幸せにしてくれるものなのである。最初から専業作家としてやれる人間なんて一握りだ、というのも勿論あるが。 「さあ、質問。あんた本当に“あと一回駄目”ならやめるの?それともこの場でその一回もやめて完全に諦める?あるいは……何回だって、何十回だって、何百回だって挑戦するの?」  妹は知らないのだ。  小学生から小説を書き始めた私が、最初に小さな賞を取るまで、数十回以上、下手したら百回近く公募に落ちていることに。  それから書籍化した今でも、公募に応募し続けていることに。 「……あたし、小説書くの辛いよ。でも、やっぱ、楽しいから。すっごくすっごく楽しいから、もっともっと……先に行きたい。怖いことや嫌なことあっても、我慢する。だから……」  注文したアイスがやってきた。目の前に置かれた真っ白なバニラアイス。  それをじっと見つめて、もなかは言う。 「次も、お姉ちゃんにアイス奢って貰う。でも今度は……“初めての突破おめでとう会”か、“これからも頑張ります会”にする」 「あんたね」  逃げてもいい。  しかし、それはいつか、立ち向かうための逃避であるべきなのだ。 「そろそろあんたが私に奢りなさいよ。“今までありがとう会”ってことで」  ちっぽけな挑戦者たちは、今日もファミレスで笑っている。  小さなバニラアイスで乾杯しながら。
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