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我ながら甘やかしているなとは感じるが、なかなかやめられないのは私も同じだった。
妹が同じ道を歩いてくれるのが嬉しいのもあるし、落選のショックもまた理解できてしまうのもあるから余計に。
そもそも、十五歳も年下の妹というのは、ちょっと特殊な存在なのである。私が大きくなってから生まれたせいで、変なライバル意識なんて持つはずもない存在。最初から、私にとっては当然のように守るべき小さな存在だったわけだ。
なんだかんだでその意識を今でも引きずっているように思う。それが、もなかにとって良いことなのかは別として。
「……あと一回、って言っちゃだめなの?」
で、そのもなかは。アイスクリームを店員に注文した後、現在むすっとした顔で私の正面に座っているわけだった。
いつもあまり厳しいことを言ってこなかった私である。だから余計に今日は戸惑いが大きいのだろう。
「あと一回で、今度こそ本当に諦めるもん。……だからあと一回、全力で頑張るんだもん」
「毎回それ、言ってる」
「言ってちゃ駄目なの、お姉ちゃん?全力投球をずーっと繰り返してるっていいことじゃん」
「……ま、ものは言いようだけどね」
そろそろちゃんと確かめたい。
そう思うのはきっと、“先輩”として間違ってないはずだ。
「あんた、頑張ってるとは思うよ。いっぱい書いてるし、昔は活字も苦手だったのに本も読むようになったし。レクチャー本?みたいなのも買ってるの知ってる。お母さんたちを説得するために、専門学校の資料も積極的に取り寄せてるみたいだしさ」
だけどね、と私は続ける。
「そろそろその“あと一回”はやめるべきだよ。……なんで私がそう言うか、わかる?」
そう尋ねると、彼女は困惑したように首を横に振った。まあ、そりゃそうだろう。自覚していないのだからしょうがない。
「あんた、あと一回でやめる、って言ってるけど結局やめないじゃん。それって、不誠実だと思うわけ。結局、自分でやった誓いを守ってない。守れもしないのに、誓いを立てて全力投球した気になってる。それってさ、ちょっと変じゃん?」
「……本当にやめなきゃ駄目ってこと?」
「違う。本当にやめるか、絶対続けるか。そのどっちかをちゃんと決めろって言ってんの。あんたはその中間でふらふらして、逃げ道作ってるだけ。それじゃ結局全力投球なんかできないもんだよ、人間ってのは。その気になってるだけでしょ」
「うう……」
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