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「あんなこと許される訳ないじゃないですか?」
美鈴は声を荒げた。
「もちろん、まともな考えじゃないかも知れませんね。でも美鈴さん、今の生活に満足されていますか?」
「それは……」
否定出来ない美鈴がそこにいた。
──満足なんて出来るはずがない──
耕三は女遊びを繰り返し、すでに私を女として見ていない。なんのためにある決断をしたのかさえ分からない。華やかな暮らしも望めない。例え浮気を理由に離婚したとしてもまともに耕三が慰謝料を払うとは思えない。稼ぎなんて雀の涙だ。だったら ────
「想像してましたよね。確実に纏まったお金が手に入る方法。それも美鈴さんが関与せずに旦那さんが死亡してくれたらほぼ間違いなく手に出来る方法……」
「生命保険……」
「そうです。道筋はこちらで作ります。二年ほどお時間を頂きますが……生命保険を掛けてすぐに亡くなられては疑われますから」
「でもなぜそんなこと……なぜ私に……」
戸惑いながらも昨日の生命保険の金額が頭をかすめていく。
「いろいろあるんですよ……この黒い世界には……」
大窪と名乗った男は笑いながら言う。
「ゆっくりお考えください……明るい未来か、暗い未来か……またお伺いに来ます。ただ証拠は残さないために連絡手段はここで……あなたはただこの道をいつものように買い物に行けばいい」
大窪はそう言い残すとそのまま何事もなかったように通り過ぎて行った。
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