第一章 勇次と瞳

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「どこがって言われても難しいかな……ただ一目惚れっていうか……」  瞳は勇次の質問に素直に答えた。 「一目惚れって」  勇次は今まで一目惚れだと言われたことがなかったので戸惑った。 「だから、今度の日曜日は仕事?」 「日曜日ですか? えっと……」  内心、休みだと伝えたかったがあの男のせいで答えられずにいた。 「日曜日はね、コウ君は奥さんデーらしく奥さんと一日離れられないみたいなの。だからゆっくり会うことが出来るわ」  一瞬ほっとする勇次。しかしまだ迷いがある。  ──こんな夢のように上手く話が進むのか?──  しかし、なぜか心底抗えない勇次。シフト表をわざと取りだし確認する風に音を立てスマホ越しに音を聞かせる。 「あっ、休みですね……」 「じゃあ、決まりね。朝やお昼は疲れてるだろうから夕方五時に念には念で羽山さんが勤めてるコンビニの二つ隣の駅でいい?三山(みつやま)デパートのある駅のほうね……」 「うん。じゃあその時間に行くよ」  勇次はもう抗えなかった。ただ会いたい気持ちか強くなっていた。 「本当!? ありがとう羽山さん。じゃあ日曜日の夕方五時に……ねっ、勇次さん……」  そう言い残すと通話が切れた。 「勇次さん!?」  勇次の耳にはその名前を呼ばれた余韻がこびりつく様に残った。
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