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入学して間もない頃、蒼登は私に新しいパソコンが欲しいと言い出した。
「クイズ研究会に入ることにした。リモートでもクイズ練習をしたいから…」
「え、クイズ研究会?」
「悪い?」
「悪いだなんて言ってないでしょ。いいよ、買ってあげる。でも、あんまり高いのはダメよ」
「…ありがとう…」
蒼登は下を向きながら、ボソボソとお礼を言った。
クイズ研究会か。私が学生の時は聞きなれない単語だったけど、今度こそ続くといいな。
それからというものの、私の想像以上に彼はクイズにのめり込んだ。練習に付き合ってほしい、とせがまれることもあった。
「問読みやってくれる?」
「何それ?」
「問題を読む係のこと。録音しながらやると、効率悪いから…」
「分かった!問題を読めばいいのね」
「ランダムに出してよ。順番だと、答え覚えちゃっているから」
「ハイハイ。えっと、じゃあ…」
「問題、から始めるんだよ」
「分かった。じゃあ、問題!北半球で見られるオーロラのことを、ノー」
ピコーン!とかわいらしい音が鳴り、赤い〇の札が上がった。
「サザンライツ」
私は答えの欄に「サザンライツ」を見つけ、「すごい!正解!」と拍手を送る。
「パラレルだと分かれば簡単だよ。ノーザンライツと対になるものを答えればいい」
蒼登は朝飯前と言わんばかりの表情をしていた。パラレルって?どうして今の問題が分かったんだろう?
ま、終わったら訊けばいっかと思っていたのに。100問目を読み終えた頃には、私はヘトヘトになってしまった。ただ問題を読み上げるだけ、ただ答えを言うだけと思っていた。
クイズをなめていた。クイズはれっきとした、知能のスポーツだ。
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