虹色の瞳

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虹色の瞳

 「ハク、おまえの瞳はとても綺麗ね。 まるで、地球のような色……」  自分の膝の上にハクを乗せたエヴァが呟いた。  「地球のような色?」ハクが母親に尋ねた。  すると、優しく微笑んだエヴァが、  「ええ、あなたの瞳は、虹色をしている 『アース アイ』なのよ」と答えた。  「『アース アイ』……」呟くハク。  リュウとエヴァの一人娘のハクは、 すくすと成長し十二歳になっていた。  「エヴァ、ハク、今帰ったぞ」  息を切らしたリュウが大きな包みを片手に ゲルの中に入って来た。  「父様、お帰りなさい」  父親に飛びついたハクを愛おしそうに 目を細めるリュウ。  「ハク、母様の言うこと聞いていい子に してたか?」  そう言うとリュウはお土産の包みを ハクに渡した。  「父様ありがとう……」  ハクは手渡された包みを嬉しそうに 開き始めた。  ガサガサガサ……。   「うわぁ~、綺麗」  包みの中から、綺麗な七色に光るペンダントが 三つ出てくると、ハクは早速、その一つを首にかけて見せた。  「どうだ、ハク。おまえの瞳と同じ虹色だ。 私と母様と三人お揃いだ」  そう言うとリュウはエヴァの首にもペンダントをかけた。  「本当、とても綺麗な色ね。  ハク大切にするのよ」  エヴァが呟いた。  「父様と母様とお揃いだ」  嬉しそうなハクの顔を見た エヴァとリュウも嬉しそうだった。  「あ……それから、ハクこれも土産だ」  リュウは鞄の中から大切そうに包みを出した。  「何?」  「開けてごらん……」  ハクが包みを開けると、鋭い刃先と 綺麗な紋様の彫り物が施され、 ケースに収納されたサバイバルナイフが出てきた。  その鋭利さに驚いたハクだったが、 それよりも、ナイフの刃先に施されている 紋様に釘付けになった。  「父様……これは?」  「護身用のナイフだ」  そう呟くとリュウはナイフケースから サバイバルナイフを抜いて見せた。  刃先に波打つ模様に光が当たると、 キラキラと光って綺麗だった。  「あなた、護身用のナイフだなんて……  この子にはまだ早すぎるんじゃない?」  エヴァがリュウに尋ねた。  彼女の言葉にリュウは、フッと息を吐くと、  「ハクは、俺の子供だ。いつ何時狙われるかも しれないだろ? 自分の身は自分で守る力を 養わないとな……」  リュウは、ナイフをハクに握らせた。  「父様、このナイフ光が当たると キラキラしてるよ」  無邪気に話すハクにリュウは、  「綺麗だろ? この刃先に刻まれいる紋様は 俺が生まれた国に伝わる技法を取り入れて いるんだ。  おまえのために特別にあつらえた」  「父様が生まれた国?」  「そうだ、これは『日本刀』と呼ばれる 刀の刃先に刻まれた紋様だ」  「『日本……刀』」  ハクはゴクっと息を飲み込んだ。  「ハク、いいか? これからは、自分の身は 自分で守るんだ。俺がおまえに格闘の技法を教えてやる。  エヴァ、これくらいはいいだろ?」  リュウがエヴァに聞くと、少し呆れたような顔で エヴァが頷いた。  
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